読めばナットクだらけ・人気講座レポート
知ってるようで知らない、農薬と野菜の話。(岩手)
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- 【パネリスト】
- 京都大学農薬研究科
教授 - 農学博士
- 宮川 恒 先生
- 【パネリスト】
- 東京大学
農学生命科学研究科教授 - 農学博士
- 眞鍋 昇 先生
- 【生産者】
- 松本りんご園
- 松本 正勝 さん
- 【会場】
- いわて県民情報交流センター
「アイーナホール」
【司会】 フリーアナウンサー 松田 朋恵 さん
- ●開催日時:2012年10月23日(火) 13:00~16:00
- ●第一部:「農薬とは何か」
- ●第二部:「農薬の安全性について」
- ●参加者:193名
会場の7割ほどが女性。やはりみなさん、食の安全に関わる農薬のことが気になるようです。
第一部は、新しい農薬の開発について長年研究している、京都大学の宮川教授のお話。
宮川先生いわく「農耕地は、“自然じゃない状態”なんです」。果たして、どういうことでしょう?
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- 農業は“自然じゃない”?
- 田んぼや畑は、意識して特定の植物を育てるための場所、つまり人間にとって都合よく作られているもの。収穫の量や味、栄養などを人間に合わせた品種が栽培されているので、野生とはまったく別の状態です。そのため、もともと野生の作物が持っている自分自身の身を守る能力=毒性は低下しており、病害虫や雑草の影響を受けやすい無防備な状態になっているのです。
- 農薬ってどんなもの?
- 農薬の役割は「病害虫や雑草などから農作物を保護したり、作物の成長を調整して農業の生産性を高めること」。主に、病害虫や雑草から守る薬剤、成長を調整する薬剤、そして生物で病害虫を退治する"天敵"の3種類に分けられます。農薬は、最終的に私たち人間の身体に入る作物を育てるためのものなので、安全性や使用方法などは厳しい基準が定められています。
国により登録されたものしか農薬と認められませんし、登録には有効期限があり、3年ごとに再審査されます。毒性の試験から環境や生態系に及ぼす影響への試験など、30種類以上の試験をクリアしたものだけが登録され、現場では使用方法が守られているかなども国の機関で厳しくチェックされています。
- 農薬の役割・昔とこれから。
- 農薬の最大の貢献、それは、農作物の生産効率を高めたことです。また農家を長時間の農作業から解放したことも忘れてはいけません。余った時間や労働力が工業やサービス業に向けられ、日本の経済も成長しました。先進国の中でも群を抜いて日本は食糧自給率が低い国。国土が狭いので農地も少なく、四季が豊かで虫や気候の影響も大きい。だからこそ現代でも、農薬への期待はますます大きくなっているのです。
第二部は、農薬の毒性や残留問題について詳しい、東京大学の眞鍋教授のお話。
途中で、クイズが出題されました。
「野菜の中には、自己防衛のために毒性物質がもともと含まれている」 YESかNOか。答えは…。
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- 野菜はみんな、毒を持っている?
- 人間を含む動物は、敵が来たら逃げることができますが、植物は逃げることができません。そのため植物は、もともと自分の中に「毒性物質」を持っています。敵や病原体から身を守って生き残るため、闘うための仕組み、それが植物の持っている毒性物質です。例えば、キャベツには49種類の毒性物質があり、そのうちの9種類に発がん性が疑われています。この量は微々たるものですが、発がん性物質に限らず、自然界においても「絶対に安全はない」のです。
- 無農薬野菜のほうが安全?
- 植物の毒性は、自分の身を守るためのもの。無農薬で栽培されると、その分病害虫の危険にさらされ、植物はより抵抗力をつけるために自分の毒性を高めてしまいます。実は、植物の毒性は非常に強いものがあり、中には人間の身体では分解できないレベルのものも存在しています。
一方、農薬は、農作物だけでなく人間や環境にとっての安全性試験をクリアしたものだけが世の中に出ることを許されます。医薬は人に対しての安全性が問われますが、農薬は環境、人間以外の生物、次世代への影響など大変厳しい基準が設けられています。「国が許可した農薬を適正に使用している場合、日本の農作物で農薬の残留に関わる問題はありません」と眞鍋先生はきっぱりお話ししていました。
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- 生産者・松本さんのお話。
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松本りんご園では、畑にピアノやバイオリンを持ち込んで満開のりんごの花をお花見する「りんご畑 de コンサート」や、畑の中から岩手山や北上川の景色を楽しむカフェを作るなど、消費者のみなさんと話をしたり、りんご畑に親しんでもらえる機会を作っています。
りんごの表面のヌルヌルは農薬だと誤解されますが、あれは完熟して収穫したりんご自身が劣化しないように自ら出すリノール酸。ただ、農薬がないと商品価値を維持できないのも確かで、無農薬で栽培した時には市場に売れない出来でした。農家にとっても農薬は高価だし散布も重労働。地域ぐるみで組織を作り、情報交換や検討を重ねて、農薬の使い方について取り組んでいます。
最後に本日のまとめとして、宮川先生から次のようなお話がありました。
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- 食の安全・安心にとって、大事なこと。
- 食の安全・安心は、食べ物が必要量あってはじめて話ができるもの。増え続ける世界の人口を支えるには、効率的な食料生産が必要です。そしてそのための重要な技術の一つが農薬なのです。また安全性は、単に毒性の有無ではなく、「リスク」という考え方に基づいて判断しましょう。リスクは、あるものが実際に私たちの暮らしにどの程度の影響を与えるかで危険性を考えます。今日、紹介されたように、農薬はたくさんの安全性試験をおこなった上で製品化され、作物や食品中の残留状態が常にチェックされています。現在使用されている農薬のリスクは、実は身の回りにあるごく普通のもの(お酒、車、紫外線など)と比べてもとても低いものです。農薬に関する試験結果や調査結果は行政機関が公表しています。そのような確かな情報をもとに農薬のリスクが十分低いことを納得し、安心して豊かな食生活を送っていただきたいと思います。
- 農薬なしで今の日本の人口を養えるかというと、はなはだ疑問です。確かに江戸時代には農薬も化学肥料もない状況で、害虫を手で取るなどの労力を費やしてそれなりの収穫が得られていました。しかしそれで賄えることができた当時の日本の人口は今と比較してずいぶんと少なく、現代においてこれだけの人に安価で安定した食糧を供給するという目的からすると、農薬なしでの農業生産は難しいと思います。
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宮川先生
- 同じですね。実は同じである前提として、動物を使って三世代にわたる繁殖試験や発ガン性試験などを行い、農薬の安全性を確認しています。その結果を踏まえて、子供からお年寄りまで、食生活における質と量を考え、しかもそこに安全係数をかけて、いずれの世代も安全となるよう残留基準が設定されています。従って、妊婦さんがずっと食べても、子供にミルクを与えても心配がないようになっていますので、問題はありません。
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眞鍋先生
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松本さん
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- 農産物に使用される農薬に対する不安の声をよく耳にします。参加された皆さんも、そんな不安を取り除きたいと、熱心に話を聞いて下さいました。農業生産には農薬は不可欠です。今後も機会あるごとに、「農薬を正しく使用した農産物は、安全である」ことを伝えながら、消費者の皆さんから信頼と応援をいただけるよう取り組んでいきたいと思います。
- ・農薬の安全が良くわかり、とてもいいゼミでした。
(60歳以上、女性、専業主婦) - ・農薬の安全性がわかった。
(50代、女性、パート/アルバイト) - ・農薬が悪いものではなく、また色々研究され安全性には全く問題がなく安心しました。
(60歳以上、女性、専業主婦) - ・最近の農薬の状況実態を知ることができ大変参考になりました。
(50代、女性、専業主婦) - ・とてもわかりやすく理解出来ました。
(50代、女性、パート/アルバイト) - ・講師の説明が非常に解かりやすく良かった。
(60歳以上、女性、専業主婦) - ・講師と司会者の対話形式がよかった。
(40代、男性、会社員/公務員) - ・一方的な話ではない、対話形式であるので飽きないで聴くことができた。
(50代、男性、会社員/公務員) - ・今回のようなゼミに、積極的に参加し新しい知識や情報を得ることの必要を感じた。ありがとうございました。
(50代、女性、専業主婦) - ・子供と参加し、農業の大事さ、作物はこんなにも人が丹精込めて作り、農薬も安全である事に勉強になりました。
(30代、女性、専業主婦) - ・農薬なしでは農作物は育たない事がわかりました。
(60歳以上、男性、無職) - ・農薬、除草剤等、今日のゼミで安心して使用できる。
(60歳以上、女性、無職) - ・小学校や中学校の保護者会で話すと良いと思いました。
(30代、女性、パート/アルバイト) - ・農薬の悪いイメージが少なくなった。
(60歳以上、女性、パート/アルバイト) - ・本日のゼミに参加して農薬についての安全性への抵抗が低く感じられ良かったです。また受付、スタッフの皆さんの礼儀正しさや気遣いがとてもよく感じられました。
(50代、女性、専業主婦)
農薬工業会では、消費者の皆さんに農薬のことを理解してもらうため「農薬ゼミ」などを開催しています。
そこでは毎回様々な質問が寄せられています。その中から、「よくある質問」についてお答えします。