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農薬が少しずつ体内に入ることによって、すぐには影響がでなくても、長い間にジワジワと健康が害されることはありませんか。
いいえ、適正に使用された農薬が作物を介して人の健康に影響することはありません。
私たちが毎日、いろいろな食品を摂取していても、その中に残留している農薬の健康への影響は心配しなくても大丈夫です。その理由は、食べ物や水などから私たちが日常に摂取する農薬の量はわずかであり、健康に有害な影響のでるリスクが、現実的な問題にならないよう、低く抑えられているからです。
物質を長い期間に渡って取り続けることが原因で起こる有害な影響を慢性毒性と呼びますが、農薬については、「慢性毒性試験」が実施されており安全性が科学的に評価されています。
慢性毒性試験の内容
慢性毒性試験とは、試験物質を動物に長期間にわたり繰り返し投与し、どのような変化が現れるかを調べるとともに、投与量と毒性との関係を知るための試験です。農薬の登録に必要な試験項目では、国際的に定められたガイドラインに基づいた「慢性毒性試験」を実施することが求められており、ラットが通常用いられます。
投与は、一年以上に渡り、物質を餌か飲料水に混ぜ、毎日摂取させることで行います。うまく摂取させることが難しい場合には強制経口投与により行われます。
投与量と毒性の関係(用量反応関係)と、毒性症状が認められない最大投与量(無毒性量:NOAEL)を知る目的から、慢性毒性試験での投与量は3段階以上が設定され、それに対照区(試験物質を投与しないグループ)を加えることになります。
なお、この試験では、投与量の上限は技術的に動物に投与できる最大量または、「1000mg/kg体重/日相当量」とされており、たとえ毒性変化が認められない場合でもこれ以上の量で試験することはありません。この「1000mg/kg体重/日」を体重50kgのヒトに当てはめると、一日に50gの農薬(有効成分)を食べなければならないことになり、現実的にはありえない過酷な設定であると言えます。
慢性毒性試験で実施される検査項目については表1に示しましたが、非常に多くの内容が含まれています。検査が実施される時期や回数は、検査項目によって異なりますが(図1)、動物の健康状態については毎日観察され、血液や尿の検査は3、6、12ヶ月後と投与終了時に行われます。
また、いろいろな器官や組織の検査は、投与期間中に死に瀕した動物と、投与期間が終了した動物を解剖して実施され、器官や組織は試験終了後も必要に応じて保存されます。
表1. 慢性毒性試験の検査項目
一般状態の観察 | 死亡の有無、毒性徴候の発現時期やその程度、詳細な臨床観察、眼科学的検査 | |
---|---|---|
体重・摂餌量・飲水量 | ||
尿検査 | 外観、容量、浸透圧または比重、pH、総蛋白質、糖、ケトン、ウロビリノーゲン、ビリルビン、潜血 | |
血液検査 | 血液学的検査 | 白血球数、赤血球数、血小板数、ヘモグロビン濃度、ヘマトクリット、平均赤血球容積、平均赤血球ヘモグロビン、平均赤血球ヘモグロビン濃度、プロトロンビン時間、活性化部分トロンボプラスチン時間、ハインツ小体*、非定型赤血球形態* |
血液生化学的検査 | 糖、尿素窒素、クレアチニン、総蛋白、アルブミン、カルシウム、ナトリウム、カリウム、総コレステロール | |
病理学的検査 (肉眼的病理検査を含む) |
臓器重量測定 | 副腎、脳、精巣上体、心臓、腎臓、肝臓、卵巣、脾臓、精巣、甲状腺、子宮 |
病理組織学的検査 | 心臓、膵臓、胃(前胃、腺胃)、副腎、回腸、副甲状腺、歯*、大動脈、空腸、末梢神経、精巣、脳、腎臓、下垂体、胸腺、盲腸、涙腺、前立腺、甲状腺、子宮頸部、肝臓、直腸、舌*、凝固腺、肺、唾液腺、気管、結腸、リンパ節、精嚢、膀胱、十二指腸、乳腺、骨格筋、子宮(子宮頸部を含む)、精巣上体、上気道*、皮膚、尿管*、眼、食道、脊髄、尿道*、関節・大腿骨*、嗅球*、脾臓、膣、胆囊(ラット以外)、卵巣、胸骨*、骨髄、ハーダー腺、そのほか肉眼的に変化が認められた器官・組織 *:必要に応じて |
図1 長期毒性試験の薬剤投与期間と慢性毒性の検査内容(模式図)
(2022年3月)